贈与税の非課税制度①住宅取得等資金の贈与
最近、金融資産を多く保有する高齢者から若い世代への資産の承継を促すための政策が、注目されています。
目玉となるのは、一定の要件を満たす贈与に対する贈与税を非課税にする制度ですが、現在、親世代から子世代・孫世代への贈与に関して、贈与税が非課税になる制度には、主に以下の3つがあります。
①住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税
②教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税
③結婚・子育て費用の一括贈与を受けた場合の非課税
今日から3回に分けて、それぞれの非課税制度の概要を、まとめてみることにしました。なお、制度の内容は、2014年12月30日に発表された平成27年度税制改正大綱までのものを反映したものです(平成27年度税制大綱の内容は、正式にはまだ法律として成立していません)。
今日は、
住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税制度
についてまとめました。
概要:父母や祖父母などの直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた受贈者が、贈与を受けた年の翌年3月15日までにその住宅取得等資金を自己の居住の用に供する家屋の新築若しくは取得又はその増改築等の対価に充てて新築若しくは取得又は増改築等をし、その家屋を同日までに自己の居住の用に供したとき又は同日後遅滞なく自己の居住の用に供することが確実であると見込まれるときには、住宅取得等資金のうち一定金額について贈与税が非課税となります。
対象期間:2019年6月30日までの間に贈与があった場合に限られます。本来この制度は、2012年1月1日から2014年12月31日までとなっておりましたが、平成27年度税制改正大綱により、2019年6月30日までの贈与に延長されることになりました。
対象者:贈与を受ける者(受贈者)が、贈与を受けた時に贈与者の直系卑属(子や孫のことです。子や孫などの配偶者は含まれません)であることが必要です。また、受贈者は、贈与を受けた年の1月1日において20歳以上であり、かつ贈与を受けた年の合計所得金額が2,000万円以下でなければなりません。
非課税限度額:贈与を受ける時期により、また、住宅が一定の省エネや耐震の基準に適合するかどうかによって、非課税限度額が異なります。具体的な贈与時期と金額(カッコ内は省エネ等の基準に適合する住宅の場合)は、以下のとおりです。
2014年 500万円 (1,000万円)
2015年 1,000万円 (1,500万円)
2016年1月~2016年9月 700万円 (1,200万円)
2016年10月~2017年9月 2,500万円 (3,000万円)
2017年10月~2018年9月 1,000万円 (1,500万円)
2018年10月~2019年6月 700万円 (1,200万円)
上記の金額は、2017年4月から消費税が10%に上がることを前提としたものです。消費税増税前の駆け込みが想定される2016年9月までの贈与に対しては非課税限度額を低く抑え、その後の1年間に限度額を大幅に引き上げて駆け込みの反動による住宅需要の低下を抑えようという、政策的な意図が組み込まれています。なお、万が一増税がなされないことになった場合には、2016年10月以降の非課税限度額は引き下げられることになっています。
使途の要件:贈与税が非課税になるのは、受贈者が自己の居住の用に供する家屋を新築若しくは取得又は自己の居住の用に供している家屋の増改築等の対価に充てるための金銭でなければなりません。
なお、「居住用の家屋」といえるためには、主として居住の用に供すると認められる日本国内の家屋で、登記簿上の床面積が50~240平方メートルの範囲内であり、それが中古である場合には、築20年以内(耐火建築物である場合は築25年以内)で、一定の耐震基準を満たしたものでなければなりません。また、「増改築等」といえるためには、家屋に対する増築・改築・大規模修繕・大規模模様替えで、かつ工事費用が100万円以上のもので、増改築後の登記簿上の床面積が50~240平方メートルとなるものである等の要件を満たす必要があります。
必要な手続:上記の要件を満たす非課税の特例の適用を受けるためには、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に、非課税の特例の適用を受ける旨を記載した贈与税の申告書に必要書類を添付して、納税地の所轄税務署に提出する必要があります。これをしないと、特例を受けることができませんので、注意が必要です。
以上が制度の概要です。非課税になる限度額が贈与の時期によって大きく異なること、住宅の広さに制限があること、受贈者の所得制限があること、そして、申告書を期間内に提出しなければならないことが、重要なポイントといえそうです。
日本の金融資産のかなりの部分を高齢者が持っていると言われていますので、この制度により、資産の若い世代への移転が進み、また、住宅需要を喚起して景気を良くする効果もあるかもしれません。


目玉となるのは、一定の要件を満たす贈与に対する贈与税を非課税にする制度ですが、現在、親世代から子世代・孫世代への贈与に関して、贈与税が非課税になる制度には、主に以下の3つがあります。
①住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税
②教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税
③結婚・子育て費用の一括贈与を受けた場合の非課税
今日から3回に分けて、それぞれの非課税制度の概要を、まとめてみることにしました。なお、制度の内容は、2014年12月30日に発表された平成27年度税制改正大綱までのものを反映したものです(平成27年度税制大綱の内容は、正式にはまだ法律として成立していません)。
今日は、
住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税制度
についてまとめました。
概要:父母や祖父母などの直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた受贈者が、贈与を受けた年の翌年3月15日までにその住宅取得等資金を自己の居住の用に供する家屋の新築若しくは取得又はその増改築等の対価に充てて新築若しくは取得又は増改築等をし、その家屋を同日までに自己の居住の用に供したとき又は同日後遅滞なく自己の居住の用に供することが確実であると見込まれるときには、住宅取得等資金のうち一定金額について贈与税が非課税となります。
対象期間:2019年6月30日までの間に贈与があった場合に限られます。本来この制度は、2012年1月1日から2014年12月31日までとなっておりましたが、平成27年度税制改正大綱により、2019年6月30日までの贈与に延長されることになりました。
対象者:贈与を受ける者(受贈者)が、贈与を受けた時に贈与者の直系卑属(子や孫のことです。子や孫などの配偶者は含まれません)であることが必要です。また、受贈者は、贈与を受けた年の1月1日において20歳以上であり、かつ贈与を受けた年の合計所得金額が2,000万円以下でなければなりません。
非課税限度額:贈与を受ける時期により、また、住宅が一定の省エネや耐震の基準に適合するかどうかによって、非課税限度額が異なります。具体的な贈与時期と金額(カッコ内は省エネ等の基準に適合する住宅の場合)は、以下のとおりです。
2014年 500万円 (1,000万円)
2015年 1,000万円 (1,500万円)
2016年1月~2016年9月 700万円 (1,200万円)
2016年10月~2017年9月 2,500万円 (3,000万円)
2017年10月~2018年9月 1,000万円 (1,500万円)
2018年10月~2019年6月 700万円 (1,200万円)
上記の金額は、2017年4月から消費税が10%に上がることを前提としたものです。消費税増税前の駆け込みが想定される2016年9月までの贈与に対しては非課税限度額を低く抑え、その後の1年間に限度額を大幅に引き上げて駆け込みの反動による住宅需要の低下を抑えようという、政策的な意図が組み込まれています。なお、万が一増税がなされないことになった場合には、2016年10月以降の非課税限度額は引き下げられることになっています。
使途の要件:贈与税が非課税になるのは、受贈者が自己の居住の用に供する家屋を新築若しくは取得又は自己の居住の用に供している家屋の増改築等の対価に充てるための金銭でなければなりません。
なお、「居住用の家屋」といえるためには、主として居住の用に供すると認められる日本国内の家屋で、登記簿上の床面積が50~240平方メートルの範囲内であり、それが中古である場合には、築20年以内(耐火建築物である場合は築25年以内)で、一定の耐震基準を満たしたものでなければなりません。また、「増改築等」といえるためには、家屋に対する増築・改築・大規模修繕・大規模模様替えで、かつ工事費用が100万円以上のもので、増改築後の登記簿上の床面積が50~240平方メートルとなるものである等の要件を満たす必要があります。
必要な手続:上記の要件を満たす非課税の特例の適用を受けるためには、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に、非課税の特例の適用を受ける旨を記載した贈与税の申告書に必要書類を添付して、納税地の所轄税務署に提出する必要があります。これをしないと、特例を受けることができませんので、注意が必要です。
以上が制度の概要です。非課税になる限度額が贈与の時期によって大きく異なること、住宅の広さに制限があること、受贈者の所得制限があること、そして、申告書を期間内に提出しなければならないことが、重要なポイントといえそうです。
日本の金融資産のかなりの部分を高齢者が持っていると言われていますので、この制度により、資産の若い世代への移転が進み、また、住宅需要を喚起して景気を良くする効果もあるかもしれません。
