ヤマト運輸の
過酷な労働環境の見直しが話題になっています。
ヤマト運輸は、通販最大手のアマゾンの荷物を取り扱っていますが、アマゾンでは、プライム会員になると小さな商品1個でも無料配送になるため、配送数が激増しています。
また、アマゾンは荷物取扱量の多さから、配送業者に対して強い交渉力を持っており、かなり安い費用で配送をさせているようです。その証拠に、
佐川急便は、あまりにも安くで割りに合わないとして、アマゾンの配送から撤退しました。
こうしたニュースを目にして思うのは、
「日本では、サービスの対価が過小評価されている」ということです。
日本人には、もともと
「水とサービスはタダ」という考え方が強く、原価がはっきりしているモノの対価については正当に評価しても、目に見えにくいサービスの対価については、低く見がちです。
これは大手の牛丼チェーンの価格を見てもわかります。日本の大手牛丼チェーンは、最近でこそ単価は上がってきていますが、一時は価格競争のため、信じられないような安い値段で牛丼を提供していました。
アメリカなどの先進国の諸外国では、スーパーで購入する食材はすごく安いのに、外食はとにかく高いという印象が強いです。しかしそれは、
人件費がかかるから当然のことと受け止められています。
アメリカで外食をすると、チップがかかることもありますが、ランチでも
1000円を切ることはなかなかありません。外国の人が日本に旅行に来ると、大手チェーンの外食が安く食べられることに狂喜するといいます。
通販の配送料も、アメリカはむちゃくちゃ高いです。重量のある家具などは、
1万円程度の物を買って送料が
5000円などザラですので、皆さん店舗に車で行って自分で持って帰ることが一般的です。
日本では、サービスの対価が過小評価されているために、可能な限り人件費を削り、スタッフに過酷な労働を強いることで、サービスによる価格の上昇をできるだけ抑えています。それは、サービスに対して高い対価を支払うことを消費者が受け入れないという土壌があることが関係していると思います。
こうした傾向は、消費者にとっては喜ばしいことのようにも思えますが、結局は、
労働者の低賃金、過重労働の温床になり、働けども生活は楽にならないという社会的な問題を生み出すことになるのです。消費者≒労働者ですので、消費の面でメリットがあっても、労働者の立場からは、結局損をするということです。
サービスにはコストがかかるという意識の希薄さは、日本の企業文化にも表れているように感じます。
日本の会社では、社内のコミュニケーションを円滑にすることが重視され、一つの物事を決めるのにも決裁プロセスが複雑で、無駄な会議、社内決裁資料の作成や調整などに膨大な時間を費やすことが多くみられます。
こうした時間は、全て従業員の
人件費を消費していることになるのですが、会社にはそのような意識は低いようです。業務を外注すればコスト意識も出るのでしょうが、正社員を使って時間をかけることに対しては、コスト意識は驚くほど希薄です。
こうした意識の低さが、
日本の労働生産性の低さに表われているのだと思います。日本の労働生産性は、主要先進国と比べても低いと言われており、残業による労働時間の長さが問題になっています。時間はかけるけど生産性が高くないというのが、日本の労働環境の特徴なのです。
日本においても、
「サービスの対価」について
正当な評価がされるようになれば、ヤマト運輸のようなサービス業の従業員は安い賃金での過重労働を強いられることもなくなりますし、企業は労働コストを意識して生産性を高めようと努力するようになるのではないでしょうか。
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